三叉神経痛の症状・原因・治療法について|激痛耐え太郎の闘病日記
三叉神経痛は人間が感じうる中でも最大レベルの痛みであると言われています。本記事では2010年10月に三叉神経痛を発症し、10年以上にわたって闘病生活を送る激痛耐え太郎が、実際の経験に基づいて、三叉神経痛の症状・原因・治療法について詳しく解説します。

三叉神経痛の症状・原因・治療法について罹患経験者が詳しく解説

本記事では、三叉神経痛の症状・原因・治療法について、私(激痛耐え太郎)が実際の罹患経験に基づき、具体的に解説します。ご自身やご家族が三叉神経痛でお悩みの方や、三叉神経痛とどう向き合っていけばいいか苦しんでいる方に少しでも参考になれば幸いです。

 

 

 

 

三叉神経痛の症状

 

三叉神経痛による顔周辺の痛みは非常に特徴的です。ナイフで刺すような強烈な痛みが、稲妻のように短く(数秒~十数秒)発作的に繰り返されます。顔の下半分のどこにでも起こりえますが、最も多いのは鼻の横の頬とあごと言われています。また、痛みは顔の右か左、どちらか一方におこります。症状がひどくなると、立っていられない程の強烈な痛みが持続的(数分程度)に続くこともあり、ここまで来るともう日常生活にも支障をきたすことになります。私も最もひどいときは、痛みが発症すると食事どころか水も飲めなくなり、ただただ横になって痛みの波がおさまるのを待つしかないという状態にまで至ったことがあります。

 

三叉神経痛による痛みは、特に理由なく起こることもありますが、多くの場合は顔・唇・舌の特定の場所(トリガーポイント)に触れたときや、飲食や歯磨き・洗顔・化粧・髭剃り・会話などの動作が引き金となって起こります。私の場合は喉の右奥歯に近いあたりがトリガーポイントで、食べ物や水分がその辺りに少し触れただけで電気ショックのような痛みが右顔面に走ることがほとんどでした。私のように口の中にトリガーポイントがあると、ひどいときには食事どころか会話すらもまともにできず、ウイダーインゼリーのような流動食を痛みの少ないときに流し込むことしかできないこともありました。

 

初めて三叉神経痛に罹患した方は、すぐには気づかないことが多いと思います。私も初めは耳鼻咽喉科で診てもらい、症状が改善しなかったので歯医者に行きましたが、歯医者でも虫歯はないと言われました。次に紹介状を書いてもらって、大きな病院の口腔外科で診察してもらいました。口腔外科では顎関節症の可能性があると言われ、精密検査を受けましたが、結局顎関節症ではないという診断になり、最後に同病院の神経内科に辿り着き、三叉神経痛であるということが分かりました。

《三叉神経痛の特徴》

 

・痛みは顔の右か左、どちらか一方におこる。
・顔や口内の一部に触れたり風にあたったりすると、電気ショックのような激しい痛みが発作的(数秒~十数秒)に繰り返し起こる
・痛みの部位は鼻の横の頬とあごが多く、顔・唇・舌の特定のポイント(トリガーポイント)を触ることにより激痛が誘発される
・数か月間で痛みが止まり、また数ヶ月後に再び発生するという周期性がある。
・一般の痛み止めの薬は効かず「てんかん」の薬のテグレトールが効く
・季節によって痛みが変動することも多く、寒い時期(11月~2月)に痛みがひどくなる人も多い。
・発症割合は10万人に4~5人で、高齢者や女性に多く、右側に多い傾向がある。

 

 

三叉神経痛の原因

 

三叉神経とは、顔の感覚を脳に伝える役割を担う末梢神経です。顔周辺の皮膚にくまなく分布し、触覚・痛覚・温度覚などの感覚情報のセンサーとしての機能を担っています。大きく分類すると、三方向(三叉)に分かれており、目から上のおでこ周辺、目と口の間のほっぺ周辺、口から下の顎周辺の3つの領域に分布しています。3本の枝は脳に入る手前で1本にまとまり、脳幹というところで中枢神経に入ります。そして大脳に接続され、痛い・熱い・気持ちよいなどの感覚として感じられます。

三叉神経痛は多くの場合、血管による神経の圧迫が原因となっています(約90%)。脳幹から出てすぐのあたりで血管が三叉神経を強く圧迫し、血管の拍動により神経に強い刺激が加わることによって痛みを引き起こしているのです。ただし、血管が神経に直接当たっていなくても、周囲との癒着等で神経の走行が歪められていることが原因となっている場合もあり、三叉神経痛発生のメカニズムは完全には解明されておりません。また、まれに腫瘍などの他の病気により神経痛を生じている場合もあります。

 

 

三叉神経痛の治療法①薬物療法

 

三叉神経痛にはカルバマゼピン(商品名テグレトール)という薬がよく効きます。逆にテグレトールが効かないのであれば、三叉神経痛ではない可能性があります。他の治療法に比べてリスクが少ないので、三叉神経痛と診断された場合はほとんどの場合、最初の治療方法としてテグレトールをお医者さんから処方してもらうことになると思います。この薬は神経を軽く麻痺させる効果があり、副作用として眠気・ふらつきなどがおこります。ですから、副作用を軽くするために少量からはじめて少しずつ増やしていき、痛みを抑えることができる最小限の量に調整していく必要があります。ただし、痛みの度合いは患者本人にしか分からないので、三叉神経痛の罹患が長くなってくると、どのくらいの痛みだとどのくらいの量を服用すれば大丈夫かということが、大体分かってくると思います。

 

ただし、罹患が長期化したり、症状がひどくなってくると、一日の上限量(テグレトールの場合800mg)を服用しても効果が薄くなってくる場合があります。私も2010年10月に三叉神経痛を発症してから、10年以上にわたりテグレトールにお世話になっていますが、比較的症状の軽いときはテグレトールで痛みを抑えることができますが、2019年に過去最大レベルの激痛に襲われたときには、テグレトールを上限量まで服用してもほとんど効果がなく、起き上がることも食事も会話もできず、ただうずくまっているような状況になりました。こうなってくると、根本的な治療方法である神経血管減圧術(外科手術)などを検討せざるを得ないだろうと思います。

 

 

三叉神経痛の治療法②神経血管減圧術(外科手術)

 

外科手術である神経血管減圧術(微小血管減圧術とも言われる)は三叉神経痛の根本的治療法であり、三叉神経を圧迫する血管を三叉神経から離すことで症状を改善させる方法で、手術が成功した場合は術直後から痛みが取れることがほとんどです(まれに1~2週間かかることもあります)。手術の成功確率は90%程度といわれており、残念ながら全員に完治をもたらすわけではありません。しかし根治に成功した場合はテグレトールに今後お世話になる必要がなくなり、痛みに苦しむこともなくなりますので、長い間三叉神経痛に苦しんでいる方やテグレトールを服用しても効果がない程ひどい場合には、手術を検討する価値は大いにあると思います。

 

具体的な手術内容としては、手術用顕微鏡を使用して直接神経から血管の圧迫を取ります。初めに耳の後ろを約4~5cm切開し、頭蓋骨に小さな穴をあけます。その後、頭蓋骨と小脳の間から侵入し、三叉神経と圧迫血管を剥離して当たらないように固定します。手術は全身麻酔で5~6時間程度です。手術後1週間で抜糸、入院期間は2週間程度です。

 

私の場合は、2010年10月に三叉神経痛を発症し、以後9年間にわたってテグレトール服用による治療をメインに続けていましたが、2019年にそれまでとは比較にならない程の痛みが発症し、テグレトールもほとんど効かない状態に陥りましたので、藁にもすがる気持ちで全国区でも有名な脳神経外科を紹介していただき、手術を受けることを決めました。結論から言うと、私の場合は手術が失敗に終わり、痛みは幾分か和らいだものの、根治には至りませんでした。ただ、手術前の強烈な痛みは、手術後徐々に改善され、半年程で一旦は痛みがおさまりました。

 

もちろん、脳神経外科の手術ですので、手術したことによる後頭部の違和感やめまい、集中力の低下などの症状はしばらく続きましたが、2~3年もすればほぼ元通りの状態にまで回復しました。手術をしたことが良かったかどうかと聞かれれば、色々と代償を払ったにも関わらず根治には至らなったので、残念な気持ちがないといえば嘘になります。ただ、私の場合はあまりにも手術直前の症状が酷かったので、手術に挑戦しないという選択肢は考えられなかったというのが正直なところです。100%根治するとは言えない以上、全ての方に手放しで外科手術をお勧めすることはできませんが、あまりにも長く苦しんでいる方や、どうしても耐えがたい痛みに苦しんでいる方は、高確率で根治に至る唯一の治療法として挑戦してみる価値は十分にあると思います。ただし、10%程度の確率ではありますが、私のように根治に成功しないケースもあることだけは肝に銘じておいていただいた方がよいと思います。
三叉神経痛の外科手術体験談と手術費用について

 

 

三叉神経痛の治療法③ブロック療法

 

三叉神経を麻痺させてしまうことで、痛みを抑える方法です。麻痺させる方法としては、局所麻酔薬の注射・アルコール注射・加熱による焼灼などがあります。この治療法は、手術に比べると簡便で身体的負担の少ない方法ですが、ブロックする神経の領域に、歯医者で麻酔をしたときのようなしびれを伴うことが欠点です。また、時間経過とともに効果が薄れてくるため、半年~2年くらいの周期で治療を繰り返す必要があります

 

私はかかりつけの神経内科の先生と、大病院の脳神経外科の先生にお世話になりましたが、ブロック療法は一度も勧められたことはありませんし、「できれば根治できた方がいいので、若くて外科手術を受ける体力があるなら、高い確率(約90%)で根治できる外科手術(神経血管減圧術)を受けた方がよいだろう」というのが、脳神経外科や神経内科の先生方の判断のようです。

 

 

三叉神経痛の治療法④ガンマナイフ治療

 

ガンマナイフは比較的新しい治療方法です。虫眼鏡で紙を焼く原理と同様に、放射線の一種であるガンマ線を三叉神経の根本付近に集中的に照射することで病変を灼き、神経の感度を低下させることにより三叉神経痛の痛みを緩和する方法です。2015年のデータでは、ガンマナイフ治療を受けた患者のうち、91%の方が治療後10日以内に痛みがなくなり、治療後3年では71%、治療後10年では45%の方が内服薬(テグレトール)なしでも痛みのない状態を維持できたと報告されています。

 

ただし、放射線は正常な細胞に対しても悪い影響を与えるので、ガンマナイフによる治療は、内服薬(テグレトール)が効かない方や、副作用で薬が服用できない方、外科手術を受けたけれども根治に至らなかった方などが適応対象となります。2015年以降は三叉神経痛に対するガンマナイフ治療が保険適用となりましたので、外科手術(神経血管減圧術)での根治に失敗し鋭い痛みが再発したような方は、この治療法も選択肢に入れてよいだろうと思います。

 

私自身は2019年に外科手術での根治に失敗し、3年後の2022年に再び激痛に襲われたため、外科手術を担当してくださった脳神経外科の先生に相談したところ、このガンマナイフ治療を勧められたので、先生にお願いしガンマナイフ治療を受けました。ガンマナイフ治療は外科手術とは異なり開頭せずに治療ができますので、入院した即日に手術し翌日には退院という非常に短期間で済む治療でした。また開頭しませんので、外科手術に伴う後頭部の違和感やめまい・痛みなどはほとんどありませんでした。ただし、ガンマナイフ治療は神経血管減圧術(外科手術)ほどの即効性がある訳ではないので、手術後3ヶ月くらいかけてジワジワと痛みが弱まっていくという印象でした。いずれにせよガンマナイフ手術は成功し、今後再発しないかどうかを見守っていくことになりました。

 

 

三叉神経痛の治療法⑤鍼灸治療

 

脳神経外科医での外科手術(神経血管減圧術)やガンマナイフ治療をどうしても受けたくない・受けられないという方は、鍼灸治療という選択肢もあります。「三叉神経痛には鍼灸治療が効果的です」というような謳い文句で、三叉神経痛が改善した患者の声などを紹介している鍼灸整骨院のホームページをご覧になったことのある方も多いかもしれません。

 

病院における外科手術やガンマナイフ治療とは異なり、鍼灸治療は痛みの発信源である三叉神経に対してダイレクトに働きかける治療法ではありませんので、三叉神経痛に対する効き目も即効性があるものではないと考えておいた方がよいと思います。加えて鍼灸治療は鍼灸師の技量により上手い下手がかなりハッキリと出ますので、自分が信頼できる鍼灸師が見つかっていない方は、やみくもに鍼灸整骨院に飛び込んで三叉神経痛に対しての鍼灸治療を受けることはお勧めしません。鍼灸師の技術が分からない場合は、とりあえず腰痛や肩こりなどに鍼灸治療を施してもらって本当に効くかどうか、自分との相性がよいかどうかを観察してからにした方がよいと思います。

 

私も、長くお世話になっている鍼灸師の先生がおられたので、2019年の外科手術を受ける直前の時期にはほぼ毎週のように鍼灸治療を受けていました。この鍼灸師の先生は、私が今まで鍼灸治療をしていただいた中でもナンバー1といってよいゴッドハンドの持ち主で、腰痛や筋肉痛などは1回~数回で確実に治療してもらえる先生でした。ただ三叉神経痛に対してはどの程度の効果があったかというと、たしかに鍼灸治療をしていただいた直後は少し痛みが和らぐのですが、数日も経てばまた元通りの激痛に戻るということを繰り返していました。ですから、いくら腕の良い鍼灸師の先生にかかったとしても三叉神経痛の痛み具合や罹患してからの経過年月(テグレトールの服用年数)によっては、鍼灸治療による効果はあまり期待できない場合があることを知っておいた方がよいかと思います。ただし、比較的症状が軽い方などは痛みが軽減したり、なくなったりする場合もあるようですので、外科手術を受けたくない・受けられないという方は鍼灸治療を試してみてみる価値はあるかと思います。

 

 

三叉神経痛の治療法⑥カイロプラクティック

 

外科手術(神経血管減圧術)やガンマナイフ治療をなんらかの理由で受けられない・受けたくないという方には、鍼灸治療以外にカイロプラクティックという選択肢もあります。カイロプラクティック施術院のホームページ等でも、「カイロプラクティック治療により三叉神経痛が軽減しました」という患者の喜びの声などが紹介されているのをよく見かけます。

 

鍼灸治療は、東洋医学で呼ばれるところのツボ(経穴)を刺激し、血流や内臓に対して治療を行うことで、人の持つ自然治癒力を高めていく治療法です。一方で、カイロプラクティックは、骨格のバランスを整えることで体の健康を維持させようとする治療法です。カイロプラクティックと鍼灸のアプローチの違いは、西洋医学と東洋医学の考え方の違いそのものだといえます。

 

ただし、いくらカイロプラクティックが東洋医学的アプローチであるといっても、脳神経外科における外科手術やガンマナイフ治療のように、痛みの発信源である三叉神経に対してダイレクトに働きかける治療法ではありませんので、三叉神経痛に対する効果も即効性があるものではないと考えておいた方がよいでしょう。また、鍼灸治療と同様に、カイロプラクティックにおいても施術師の技量にはかなり幅があります。また、本場のアメリカと違い、日本では公的な制度がないため、短期間の学校やセミナーに行っただけでカイロプラクターを名乗る人もいるため、施術師の技量を見極めるのが非常に難しいのが実情です。(日本にいる約1万人のカイロプラクターの中で国際基準カイロプラクターは800人程と言われています)

 

私自身は、比較的自宅に近いところで人気の高いカイロプラクティック治療院を見つけることができたので、2022年8月に痛みが再発したのをきっかけに、そこに通いはじめました。はじめに提携した整形外科でレントゲン写真を撮影してもらい、背骨の歪み等をハッキリ認識した上で、長期的な治療プランを立て、治療を継続することで歪みをなくしてゆき、結果として血流も改善され、三叉神経痛も緩和される、というのが施術師の説明でした。東洋医学の流れを組んでいるだけあって、非常にロジカルで説明が分かりやすく、確かにそこで治療を継続していけば背骨の歪みは改善され、腰痛や血流などは改善されていくだろうと思いました。ただ、通い始めて一ヶ月くらいで三叉神経痛の痛みがピークを迎えてしまったため、結局脳神経外科でガンマナイフ治療を受けることになり、カイロプラクティックでの治療はその時点で事実上終了しました。

 

もちろん、カイロプラクティックでの治療効果を否定する訳ではありませんし、背骨の歪みや血流を改善することが体全体の健康や三叉神経痛の改善に良い影響をもたらすであろうことは十分考えられますので、三叉神経痛がそれ程ひどくない方や、肩こり腰痛なども同時に改善していきたい方にとっては、カイロプラクティックでじっくりと骨格のバランスを整えていくことは効果があるだろうと思います。ただし、既に三叉神経痛を罹患して長い期間が経ってる方や、三叉神経痛の症状が相当ヒドイ方の場合は、即効性のある治療法としては適さないかもしれません。

 

 

まとめ

 

三叉神経痛の痛みは「痛みの女王」と称される程に激烈です。また、「この世で感じる最もひどい痛み」と表現される激痛に耐えきれず自殺する人もいるため、「自殺病」とも呼ばれています。ただし現代は、痛みを抑える特効薬(テグレトール)や根治する外科手術(神経血管減圧術)、さらにはガンマナイフ治療など、三叉神経痛を克服するための治療法が確立しています。三叉神経痛に罹患したばかりの方はその痛さゆえに絶望感を覚えるかもしれませんが、様々な治療法があることを知っていただき、痛みを克服して明るい人生を生きていただきたいと思います。本記事が三叉神経痛の痛みに苦しむ方々にとって多少なりとも参考になれば幸いです。